【FX】両建て最強論は本当か?必勝法どころかメリットが見つからないんだが…
FXで両建てと言えば『最強』とか『必勝法』とかいうワードが出てきますが、
僕はFXで利益を狙う目的の両建てが必勝法どころかデメリットしかないと思っています。
なぜなら、一見して必勝法のように思える両建てトレードも、損切りが先行したり出金可能な金額が少なくなるような罠が潜んでいるからです。
この記事では、巷では有料商材として売られていることもある『両建てトレード』について何の意味もメリットも無いことをまとめていきます。
両建てとは?
両建てとはショート(売り)とロング(買い)のポジションを同時に持つことです。
買いと売りとを同じ枚数持つことで、どれだけ相場が荒れても含み益と含み損の差が一定に保つことができます。
はい、全く意味が無いです。一見、意味が無いと思われるかもしれませんが、
『運が良ければ』
最大限の利益を挙げるトレード手法となり得ます。
(大抵運が悪いので往復ビンタで大損こきます。)
この『運が良ければ』が肝であり
運が悪ければただ状況を不利にしているだけのことがほとんどです。
両建て最強論はなぜ生まれたのか?
まず、そもそも両建て最強論が何故生まれてきたのか?
僕の中では、昔ハイレバトレーダー界隈で海外FX口座のゼロカット制度を利用したトレード手法が流行ったからじゃないかなと思っています。
『ゼロカット』というのはトレードで口座残高を超える多額の損失が出ても『入金以上の損失が発生しない』ように救済する海外FX口座独自制度です。(ちなみに日本では法律上の問題で導入できない。)
その制度を利用して、
- ある口座ではフルレバでロング(買い)
- 別の口座ではフルレバでショート(売り)
をすると…?
以下のようにどちらかの口座で絶対に爆益が出ます。
ゼロカット応用フルレバトレード
A口座(残高10万円)
USD JPYをフルレバ買い⇒+50万円の利益
B口座(残高10万円)
USDJPYをフルレバ売り⇒-50万円の損失
しかし、ゼロカット制度があるので実損は10万円
トータル:50万円-10万円=40万円の利益
どうでしょう?
単純にフルレバトレードしているだけなのに40万円の利益(+300%)が出ているのが分かります。
もちろん現在では利用規約に『複数口座、異業者を使った両建ては禁止』と明記され禁止になってからはこの手法は使えなくなっています。
しかし、両建てトレーダーの頭の中にはこの考えがまだ残っていて
『両建てすれば片方は絶対に利益がでる、損してる方を何とかすれば儲かる』
と思っているのかもしれません。
両建てを利用したトレード手法
①両建て指標トレード
両建て指標トレードは、指標発表前の大きな相場変動を利用した両建て手法です。
例えば雇用統計や要人発言の前に両建てのポジションを持っておいて、発表後の大きな上昇、または下落を待ちます。
指標発表でどちらに動くかを確認したら、損失が出ている方のポジションを損切りして、あとは利益が出ているポジションの利益を伸ばします。
手動だと難しいのでどちらにも指値(利確)、逆指値(損切り)を入れておくこともあります。
この方法が上手く行けば、指標で上に動こうが下に動こうが利益を挙げられるので、一見すると最強の両建てトレードに見えます。
動かなかったらどうするの?
指標発表があるからと言って、必ずしも激しい相場変動が起こるとは限りません。
大変動が起こると見せかけて、すぐに元のレンジに戻ってしまうことが当然起こり得ます。
そうなると、スプレッド分負けているポジションを2つ作るだけです。
両方狩られることもある
両建て指標トレードの最大のデメリットは両方のポジションが狩られるリスクがあることです。
指標発表の瞬間は個人のトレーダーだけでなくヘッジファンドもチャンスを狙っています。
上に動くと見せかけて一気に逆方向に振ってくることが多々あります。そうなるといわゆる『往復ビンタ』を食らってしまい意味がありません。
出来上がったチャートを見ると狩られ無さそうに思うかもしれませんが、往復ビンタを食らう時は一瞬なのでリアルトレードで冷静に対処するのは非常に難易度が高いです。
初心者だと間違いなく狩られるのがオチでしょう。
②両建てナンピントレード
両建てナンピントレードは一定の値幅が動く毎に決済と両建てを繰り返す手法です。
図のように、値動きがあったら利益が出た方のポジションを決済すると同時に、決済しなかったポジションと同じ枚数を両建てします。
両建てナンピントレード
口座残高100万円 1ポジション10000通貨とする
①140円スタート(S1個-L1個)
ショート×1、ロング×1でエントリーする
②141円到達(S2個-L2個)
ロング×1決済(+1万円)
ショート×1、ロング×1を追加エントリー
③142円到達(S3個ーL3個)
ロング×2決済(+2万円)
ショート×1、ロング×1を追加エントリー
④143円到達(S4個-L4個)
ロング×3決済(+3万円)
ショート×1、ロング×1を追加エントリー
④143円到達(S5個-L5個)
ロング×4決済(+4万円)
ショート×1、ロング×1を追加エントリー
このように確実に口座残高が増えて行きます。
利益は増えるが含み損も増える
両建てナンピンの欠点は利確する金額が増える一方で含み損も順調に増えて行くところです。
当たり前ですよね。
果たして意味のあるトレードなのか疑問なところです。
資金は増えるが余力は減っていく
両建てナンピンの最大の盲点は口座残高が増えるスピードより余力が減るスピードの方が速いことです。
レバ25倍、1ポジション10000通貨の必要証拠金を1万円として試算すると?
レート | 口座残高 | 必要証拠金 | 含み損 | 余力 |
140円 | 100万円 | 4万円 | 0円 | 96万円 |
141円 | 101万円(+1) | 8万円 | 1万円 | 92万円 |
142円 | 103万円(+2) | 12万円 | 3万円 | 88万円 |
143円 | 106万円(+3) | 16万円 | 6万円 | 84万円 |
144円 | 110万円(+4) | 20万円 | 10万円 | 80万円 |
なんと!
レートが動くにつれて余力(余剰証拠金)がどんどん減っていくのが分かると思います。
余力が減るということは?
- 延々と両建てナンピンをするのは不可能
- 余力が減れば証拠金維持率も減る
- 余力>>出金可能額
これでは何のために両建てナンピンをしているのか意味がないどころかメリットの欠片もありません。
普通にトレードした方が良い
では、行き詰った両建てナンピンを解消するにはどうしたら良いでしょうか?
答えは
- 全決済する
- 強運で各ポジションをプラス決済する
- 余力を使って含み損をチャラにする
この3つしかありません。
全決済してしまっては今までの両建てナンピントレードの意味はなく、苦労は水の泡と消えてしまいます。
が、だからと言って残された余力を使って含み損をチャラにしようとしたり、強運に頼るようなトレードをしてしまうと最悪ロスカットになってしまうかもしれません。
最初から普通にトレードした方が良いのでは?というジレンマに陥ってしまいます。
③長期トレード中の短期トレード(つなぎ売り)
高度な両建て手法と言われるのが株取引の『つなぎ売り』のFX版です。
長期ポジションを抱えつつ短期的には逆張りのトレード(一時的な両建て)で利益を積み上げていく手法です。
図で解説すると、長期的に下がると見てショートポジションを持ちながら、短期的上がるところではロングでコツコツ利益を積み上げていきます。
僕のなかでは『つなぎ売り』による両建てに限っては有りだと思っていますが、万人が上手く熟せるトレード手法ではないので注意が必要です。
超上級者向けの手法
チャートを見ながら『つなぎ売り』を感がると凄く簡単そうじゃないですか?
ここまで紹介してきた両建て手法より現実的で『そうだ!これぞ最強の両建て手法だ!!』と思うかもしれませんが、
実際のリアルトレードでやろうと思ったら凄く難しいです。
なぜなら、こんな芸当が出来るのは
- 超凄腕天才トレーダー
- 運がよかったトレーダー
- ヘッジファンド
だけだからです。
要するに、スイングポジションを保有しながらスキャルピングやデイトレードをしているわけですが、そのトレードだって確実に勝てるか分からないですよね?
初心者が手を出しては折角のスイングポジションの利益を減らすか、いたずらに余力を圧迫するだけだと思います。
後出しだから簡単そうに見えるんだよ。
やるなら『口座を分ける』こと
初心者にはお勧めしませんが、実は僕は『つなぎ売り』をよくやります。
なぜなら、スイングポジションを保有中しながら短期でもコツコツ利益を挙げることが出来るので活用しない手はないからです。
もともと僕はスイングトレードが得意なので、長期の含み益を抱えながら短期で局所的な利益を取って行くスタイルです。
ただし、失敗しない為に絶対に守っていることが2つあって
①同一口座内では両建てをしない
②短期用と長期用の口座2つ持つ
この2点を守ってさえいれば、不必要に含み損が増えて行ったり、余力だけが減っていくようなことを防ぎながら『つなぎ売り』ができます。
僕の場合、短期用口座で積み上げた利益を長期用口座に入れて複利でスイングトレードをするようにしています。
見た目は非常に地味ですがコツコツ利益を挙げれば着々と原資が膨れ上がっていくお勧めのトレードスタイルです。
まとめ
両建てとは『ロング(買い)』と『ショート(売り)』のポジションを同時に持つことです。
巷に溢れている両建て手法
- 両建て指標トレード
- 両建てナンピントレード
は一見すると最強のトレード論に思えますが、落とし穴ばかりで一つ間違えば損切りが先行したり行き詰って出金できなくなるような意味がない手法ばかりです。
唯一、『つなぎ売り』に関しては僕は長期用口座と短期用口座を作って独立してトレードをしています。
上級者向けのテクニックですが、コツコツ原資を増やしていくにはお勧めの方法なので試してみてください。